イタリアの若者失業率は改善したのか
イタリア社会を語るとき、しばしば取り上げられるのが「若者失業率」の高さです。卒業しても職が見つからない、見つかっても不安定な契約ばかりという状況は、長らく若者にとって重い現実でした。しかし2025年現在、この状況に変化の兆しはあるのでしょうか。
長年の課題:高止まりする失業率
イタリアの若者失業率は、欧州債務危機後の2014年に40%近くに達し、EU諸国の中でも最悪水準となりました。その後、観光業の回復や製造業の安定により数字は徐々に改善しましたが、依然として20%前後で推移し、EU平均(約14%)を大きく上回っています。南北格差も深刻で、北部では就職率が改善している一方、南部では依然として失業率が高止まりしています。
最近の動き:政府の施策
メローニ政権は2024年以降、若者雇用を重点政策と位置付け、企業に対する雇用助成金やインターン制度の強化を打ち出しました。特にスタートアップ企業に対しては税制優遇を設け、若者を積極的に採用する動きを後押ししています。また、デジタル分野や再生可能エネルギー関連産業における新規雇用の創出を促すことで、従来の観光や建設に偏った雇用構造を変える狙いも見えます。
若者の声:「不安定さ」と「希望」のはざまで
報道によれば、大学を卒業した若者の多くは「就職先は見つかるようになったが、非正規契約が多い」と語ります。1年ごとの契約更新や低賃金に悩む一方、スタートアップや海外勤務など新たな挑戦の機会が広がっていることを前向きに受け止める声もあります。特に大都市圏では、デジタル関連の求人が増えており、過去よりは選択肢が拡大しているといえるでしょう。
EUとの比較:まだ残る差
ユーロスタットの統計によれば、2025年春時点のイタリアの若者失業率は約21%で、スペインに次いで高い水準です。EU全体の平均が14%であることを考えると、依然として課題は大きいものの、かつての「突出した悪化」からは徐々に改善傾向にあります。イタリア政府としては、この差をいかに縮めるかが次の大きな課題です。
今後の展望:構造改革は進むか
イタリアの若者雇用問題は単なる景気変動ではなく、教育制度や産業構造と深く結びついています。職業訓練と企業ニーズのミスマッチを解消できるかどうかが鍵であり、EUが推進する「グリーン産業」や「デジタル化」の波を的確に活かせるかどうかに未来がかかっています。
若者失業率は「イタリアの病」とも呼ばれてきましたが、その改善は少しずつ進んでいます。とはいえ、本当の意味での解決には、南北格差の是正や教育改革といった長期的な視点が不可欠です。2025年のイタリアは、その難題に向き合い続けています。
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