EU予算交渉で揺れるイタリア
EUの予算交渉は、毎回加盟国の利害が激しく衝突する場です。2025年の交渉も例外ではなく、イタリアはメローニ政権の下で自国の利益を強く主張しています。経済停滞と高い公共債務を抱えるイタリアにとって、EUからの支援と柔軟な財政枠組みは死活的に重要だからです。
背景:コロナ復興基金の延長論
イタリアはコロナ危機後の「復興基金」の最大の受益国であり、その資金は国内インフラやデジタル化に使われてきました。しかし基金の期限が迫る中、イタリアは延長または新たな支援枠組みを求めています。これに対し、財政規律を重んじるドイツやオランダは慎重姿勢を崩していません。
メローニ政権の主張
メローニ首相は「成長なくして健全財政はない」と強調し、予算の柔軟性を訴えています。特に南部地域のインフラ整備、移民対応費用、そしてエネルギー安全保障への投資が必要だと主張。イタリアは「地中海の最前線」としてEU全体の利益を守っているのだから、財政的な支援も公平に分担すべきだという立場です。
他国の反応
フランスはイタリアの主張に理解を示しつつも、EU財政規律の枠内での協力をという立場です。東欧諸国はウクライナ支援に予算を割くべきだと主張し、南欧支援とのバランスに敏感です。結果として、交渉は「北と南」「西と東」という構図で複雑に絡み合っています。
市民の視点
イタリア国内では、EU交渉をめぐるニュースが大きく報じられています。市民の関心は「支援がどれだけ地元に還元されるか」に集中しており、特に若者や南部住民はインフラ投資や雇用創出に期待を寄せています。一方で「EUへの依存が深まることへの不安」もあり、世論は揺れています。
展望:調整役としての可能性
イタリアは対立の渦中にありながらも、調整役としての可能性を秘めています。エネルギーや移民問題でEUに貢献しているという自負は交渉カードとなりうる一方、その理由だけで財政規律の緩和を求めるのは、やはり説得力に欠けます。いかに具体的な改革案とともに予算を引き出せるかが、今後の焦点となるでしょう。
EU予算交渉は「数字合わせ」の場に見えがちですが、実際にはヨーロッパの未来像をめぐる激しい議論でもあります。イタリアがその中でどのような役割を果たすかは、国内だけでなくEU全体にとっても大きな意味を持つのです。
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